【連載】ペアレント・ピアヘルピング(3)〜中学校における「ペアレント・ピアヘルピング」の実践例

A中学校支援本部 カウンセリングサポート部主催
「子育てをする親のための【ピアヘルピング講座】
第2回目実施報告(2)

主催代表:初級教育カウンセラー 齊郷敦子

(第一部、第二部についてはこちら)

【三部 全体シェアリング:SGEの気づきの共有 ピアヘルピング:日頃の子育てに関する相談】
まず、「わが子の長所の棚卸し」の感想を聞いたところ、
「普段悪いところばかり目につくので、良いところを探すのは難しかった。」
「わが子に良いところがあることも忘れていた。」
「しまってある棚 を探すところから始めないといけなかった(冗談)。」
と盛り上がった。和気あいあいとした雰囲気の 中、「皆、そんなものなのだ」という安心感が生まれたのか、現役保護者の中から、わが子について、 「家庭ではゲームをする時間が長く、子どもとの関わり方で悩んでいる、進路選択も学校生活や学業についても意欲が見られず、このままでいいのか焦っている。落ち着かず、ここに申し込んでみた。」 との自己開示があった。

「子どもの良いところが浮かび辛かった」との発言に、ピアヘルパーから、「さっきのエンカウンターで、○○さんが、一生懸命に長所を考えている姿が印象的だった。お子さんは、お母さんに愛されているのだな、と感じた。」「大丈夫、皆同じだから。」との言葉が返された。

(○○さんの☆印SGE)

そこで、その流れのまま、フリートークの相談タイム(ピアヘルピング)へと移すこととした。
今回のピアヘルパーは、高校生の保護者でかつ他校の中学生の兄弟もいたりと、比較的最近、子育てにおいて同じような体験を経てきた方たちが多く、一層気持ちを共有出来たのではないかと思う。

時には、笑いあり、涙ありのピアヘルパー自身の自己開示には、相談者(ヘルピー)にとって「自分の悩みなんて、もしかしたら大したことはないのでは?」、「今は辛くても、いつかは笑ってわが子の成長を喜べる時がやってくる」、そのように感じ、心が軽くなって励まされたことだろう。

学校の先生にも相談済みということだったので、手だては取ってくれていると思うが、それでも心配で不安なのは、親の心境である。
例えば「学校ではちゃんとやっていますよ」と言われても、家の姿しか見ていなければ、「本当にこんな状態で大丈夫なのか?」と疑いたくなる。「焦ることはない」と言われても、いずれは、『高校進 学』という課題に直面することを考えると、そう悠長にも構えていられないのでは?と心配になる。
そんなもやもやした心情を汲み取り、寄り添い、励ますことが出来るのは、『同じA中学校を卒業し たお子さんがいる』先輩保護者だからこそだと思う。

(今回のピアヘルピングを通じて感じた事)
こういった親同士の集まりで自由に会話をすると、子どもや学校への愚痴めいた話題に流れる傾向が ある。そうならない為にしている工夫の意義が、今回の会を通じて再確認出来た。

  • 学問的アプローチとピアヘルパーの技術の進歩
    今回とくに「ピアヘルパーさん凄い!!!」と感じたのは、受容や支持で気持ちに寄り添うだけで なく、明確化や質問を交えながら、抱えている問題の把握や解決の糸口にも触れていたことだ。ピアヘルパーは、何度もこの講座で交流分析やピアヘルピングの技法を体験している。独善的、批判 的にならず、そういった知識や技法を交えながら、客観的なアドバイスをしてくれた。「私の場合、子どもとの対話で、C→C、C←C(子どもの自我状態で凍結した場合)になってしまっ たら、自分の方から先に中断して冷静になろうと努力するよ。」「お母さんへの反発は、(兄弟抜きで)自 分だけを構ってほしいから(負のストロークの法則)。二人きりでの時間を持つ工夫をしてみては?」 「自分は、高校の説明会への道中が二人きりで話すチャンスとなったよ。」など。

    事前に、カウンセリングの学問的なアプローチから始める意義は、ピアヘルパーだけでなく、ヘルピ ーにとっても必要で、「せっかく習った言葉や技法だから、使ってみよう。」という意識づけになる。

    カウンセリング心理学がベースだから、決して悪口や愚痴大会にはならない、未来への勇気づけとな るような交流となる。

  • 学校に協力的なピアヘルパー
    「例えば、○○先生に相談してみたら?」「担任の○○先生は、熱心な良い先生だよ。」「A中学校の進路説明会は分かりやすいから、絶対出席したほうがいい。」など、教員や学校の教育活動について、 フレッシュな情報を与えてくれた。 「いつだったか、部活の先生が、私の目の前で、わが子と子ども同士のような言い合いでバトルしていた時があった。驚いたが、おかげで自分は客観的な立場になれた。」そのようなお子さんと先生とのエ ピソードを語ってくれ、A中には、困ったことがあっても、親身になって助けてくれる先生がいること を教えてくれた。陰ながら、しかもお子さんが卒業しても、このように先生や学校について応援してくれる方たちがいることを、大変頼もしく感じている。毎年、2~3名新しいピアヘルパーを加えているが、特に一定の基準を設けているわけでない。時間の都合がついて引き受けてくれそうな人に、こちらから協力を打診し、OKしてくれた人たちになって もらっている。改めて考えてみると、ピアヘルパーさんになってくれた方たちの共通点は、皆、『お子 さん自身がA中への肯定的感情を持っている』ということであった。わが子が、A中についてそう感じ ているからこそ、親もA中に協力的、肯定的になれるのだと思う。
    ピアヘルパーには、保護者→ピアヘルパー→学校支援本部員(教育活動の実働を手伝う)になる人も いる。つまり、元をたどると、先生たちの生徒への頑張りが、巡り巡って地域の協力者を生み、さらにその思いが学校へフィードバックされているということになる。

    「A中で本当に良かった。」「先生が親身になってくれた。」「いっぱい仲間が出来た。」「部活が楽しかった。」「卒業は悲しかった。」「今でも旧友と仲良くしている。」「A中の経験が高校生活に活かされて いる」・・・ ヘルパーからの「わが子がそういう風に言っていた」という言葉は、今現在、A中生を 育てているヘルピーにとって、最大の勇気づけになろうかと思う。

最後に、明るい表情になったヘルピーから、「いっぱいアドバイスをもらって、これから色々試して みようかと思うが、どれが上手くいくのか不安もある。」との言葉があった。

それには、「失敗してもいいんじゃないですか?わが子だから、大丈夫。ピアヘルパーさんがやって きたみたいに、いろいろやってみて下さい。」「お母さん一人で頑張ろうとしないで、先生方や他の家 族、自分の友だち等にも協力してもらって下さい。」などの励ましの言葉がかけられた。同じ学年の保 護者同士もいたので、大変心強いことだろう。

次回の予定を告げると、皆さんで「予定をあけておくね!」と約束しあっていた。この講座を通して、新たな仲間関係が生まれたことを嬉しく思い、締めくくりをした。

(エゴグラムと○○さんの☆印のワークシート)

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