【連載】リレーエッセイ3

ひと月に1本ずつ、東京教育カウンセラー協会理事が、エッセイを執筆して掲載します。

 

異動の効能
                 東京教育カウンセラー協会副代表 笠 さわ子

私は公立中学校の教員である。今年度から自閉症・情緒障害特別支援学級の担任となった。これまでは通常級の教員として、生徒の悩み相談や心の教育、不登校やいじめ対策に関する学校・学級への提案や体制づくりなどを行なってきた。2005年の発達障害者支援法以降、徐々に生徒指導の課題は特別支援教育が主となった。教育相談委員会は特別支援校内委員会になり、私も教育相談担当から特別支援コーディネーターとなった。不登校生徒の対応は、SSWなどの体制が整い、いじめは、学校いじめ対策委員会が制度化された。担任にとって、登校している生徒の特別支援は切実な課題であった。しかし担任は学級の他の生徒もいて、個別の対応には限界がある。

私は教育カウンセラーをアイデンティティとする特別支援コーディネーターとして、校内委員会の中で事例検討を行ったり、保護者との面談に入るために資料を集めたりするなどしていくうちに、個別の対応を考えることが多くなった。特別支援コーディネーターとして得た、特別支援や連携機関の情報は専門性が高く、担任に情報を伝えても、保護者に、正確かつ的確にニーズに合った情報を出すことは難しい。不登校生徒も全国平均でも各クラスに1名以上いて、SSWや教育センターとの連携も引き続き、教育カウンセラーの活躍の場である。

つまり、従来の教育相談の仕事の他に、特別支援コーディネーターとして担任に代わり、生徒一人ひとりに応じた必要な支援の内容を考える仕事が大幅に増えた。
これは特別支援を要する生徒にとってはとても望ましいことである。しかし通常級の教員であった私にはとても大変な仕事だった。そこで、特別支援教育を、一度しっかり勉強してみようと思い、今年度、特別支援学級に異動した。

特別支援教育は教育相談の理論とは正反対と思えるものもあり、心だけでなく身体に関するものもあり、必要な支援は一人ひとり全く違うなど、驚くこともある。しかし私のいる自閉症・情緒障害特別支援学級は、発達障害と言われる個別の不得意や苦手があるが、心の課題は通常学級の生徒と変わらない。苦手への対応には特別支援の知識が必要であるが、生徒との関わりや生徒の対人関係の学習などは、教育カウンセリングで学んだ理論が基盤となる。

例えば通級指導教室と合同のコミュニケーションの授業を、「交流分析」を土台にして作ったり、自己理解に「ジョハリの窓」、感情のコントロールに「ゲシュタルト療法」を取り入れたりしている。

お陰様で、立ち上げ1年目の今年度は生徒と保護者の協力もあり、試行錯誤しながら良い状態で過ごせている。区で初めての学級の運営が順調にスタートでき、特別支援教育の中で教育カウンセリングの重要性を実感している。

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