【連載】リレーエッセイ4

ひと月に1本ずつ、東京教育カウンセラー協会理事が、エッセイを執筆して掲載します。

 

震災後の子どもの心を支える        

                   東京教育カウンセラー協会理事 阿部美知子

能登半島地震が起きて早1か月が過ぎました。
被災された方々には心からお見舞い申し上げると共に、今、自分ができることは何かを各自が自分の立場で考えなくてはならない時期であると強く思っています。
改めて被災地の子どもたちは今どうしているだろう、寒くて狭い避難所で、大人でさえ辛い状況の中で、子どもたちの身体と心にはどのような変化が起きているのだろうか。教育に関わる私は大変気になります。震災を体験した子どもたちの心の傷は、とても短期間では癒されるものではなく、1995年に起きた阪神淡路大震災の被災地域の子どもたち約1600人の調査によると34%が
PTSD被害を受けたとの報告があります。(国崎信江・危機管理対策アドバイザー)

さて、2011年の東日本大震災の後、私は8月18∼19日に開催された教育カウンセリング学会(京都華頂大学)に参加、表題のテーマの発表を聞いての当時の記録文が出てきたので、今回の地震後の「子どもたちへの支援」の参考になればと記します。

東日本大震災における子どもへの影響と、子どもを支える教師へのサポートについて、
私たち教育カウンセラーがどのように関われるか、関心のあるテーマでした。
分科会での研究発表は、秋田県公立中学校養護教諭、宮城県仙台市立小学校教諭そして宮城県スクールカウンセラーが、それぞれの立場からの発表ではありましたが、共通していることは「被災地では子どもたちが落ち着いているように見えることが問題ではないか」ということでした。
阪神大震災が起きた数年後に、子どもたちの心が荒れ、不安や悩みを抱えた子どもが不適応を起こしたり、衝撃的な言動をする児童生徒が増えたとの報告を踏まえ、”にこにこしているから大丈夫ではなく、これから現れる心的現象に対応できるスキルを持つ”大人へのサポートが必要であることを感じました。
東北人は我慢強さが美徳と言われていて、実際、被災地でも「自分はまだ生きているし、もっともっと大変な人たちがいるから自分はわがままは言えない」という被災者が多かった、との発言がフロアからありました。
「阪神大震災でも大人の課題がそのまま子どもたちの生活に反映したように、東北でもじわじわと影響してくるものと思う。その意味で、意図的にストレスを解消したり不安や悩みを解決できる心のケアを実態に応じて取り組む必要がある。」と、発表者の一人は具体的なエクササイズを提案、実行された結果を報告されました。

小学校低学年では、普段学校では明るく過ごしているが、調査をすると、腹痛を訴える子どもが多い、夜泣き、おどおど感、びくびく感がある、意固地になる等を心配する保護者が半数近くいたそうです。
エクササイズは感情の表出や不安の解消をしやすいものを授業に取り入れたとのこと。
例えば「私の心のエネルギー充電」「気持ちの整理箱」等のエクササイズは、自分の言いたいことをひと前で発表することで、孤立気味だった子どもも加わって遊ぶようになったという事例が出されました。(中略)
大人が安心して働く場所があることが、子どもたちにも安全で安心な環境を提供することであることを改めて考えさせられました。
私たち教育カウンセラーができることは、個人個人を支援することより教師を支援すること、学級で教師が子どもたちがその年代でクリアできなかった発達課題を考えながら、次の学年につなげることができるよう支援することのように思いました。

まだ被災から1か月で、ようやく学校に子どもたちが通えるようになってきたところですが、このようなときこそ國分康孝・久子先生の提唱された構成的グループエンカウンターが子どもたちの心を支えることができたらと期待と希望をもっています。

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