いよいよ新年度です。学級開きに備えて、あれこれと作戦を練り始めた先生も多いかと思います。私は昨年、4月の「総合的な学習の時間」で〈(⑴)「できごと」「考え」「気分」をつかまえる〉の授業を行いました。「鉄は熱いうちに打て」ですね。その反応はなかなかのものでした。新学期は何かと不安な時です。そんな時に不安への向き合い方などを学んでおくと、彼らは進んで生活の中に取り入れていきます。

授業を受けて〈気分は考えの影響を受ける〉ことを意識した生徒の一人は、「新クラスで友達から相談を受けて、人によって考え方が違うことを反省しあった」。そして「ネガティブな思考をしすぎないようにする」ことを心がけるようになったと振り返り用紙に記しました。落ち込んだり不安になったりしても、一度立ち止まって、現実に目を向けて自分の考えを見直すと、前向きな考えにつながるということを学び取ったようです。

また、授業に関わらず私たちは、日常友達と話す中で、先に進むための工夫を見出していく経験を繰り返しています。そのやりとりの流れを表にまとめたものが「思考記録表」だといいます。「思考記録表」、何だか難しそうな表ですが、自分の心の中で考えを整理したり、友だちと話して考えを切り替えたりする心の流れを目に見える形にしたものだと説明されます。

そのような理由から、この「思考記録表」は別名、「一人(⑵)二役の方法」と呼ばれます。3コラム、5コラム、7コラムがありますが、今回は7コラムを見てみましょう。

1.表2は「思考記録表」とその記入例です。これを見ると何だか難しそうですが、これを二人の会話調にしてみるとそれほど難しいものでもなさそうです。そこで…、「『思考記録表』をアレンジしよう!」というワークを作って取り組んでみました。切っ掛けはストレスマネジメントネットワーク(⑶)の研修で、参加者から『ご当地思考記録表』の提案があり、その話題で盛り上がったという話を聞いたことでした。例に出されたのは関西弁の「思考記録表」です。

それを聞いて、「よし。それでは、『ご当地思考記録表』に対抗して、『高校生版思考記録表』を作ろう!」と試みたわけです。
授業の中でペアを作ってロールプレーをしながら、「高校生版思考記録表」づくりに挑んでみました。その結果できたのが上の表です。「テンションどう?」、とても私には思いつかない言葉です(笑)。軽いテンポで進む、生徒たちの教室での会話が目に浮かんでくるようです。生徒からはこの他に、反証「ちょっと1回落ちついて。」「でも、ちょっと違くない?」などの案も出てきました。あれこれ考えているうちに「根拠」や「反証」の言葉の意味もわかってきたのではないでしょうか。小学生、中学生が作ったら、また違う「思考記録表」ができるかもしれませんね。『年代別思考記録表』とでも呼べそうです。

相談というのは、対話をしながら問題を整理していくことなのでしょう。それはその対話の、一つずつ言葉を重ねながら進んでいくプロセスに意味があるようです。「思考記録表」を使うときは、一つずつ上から順に「書く」という作業をしていきます。「書く」ことで問題が徐々に整理されて気分が楽になっていくのです。
認知行動療法では「書く」ことを大事にします。その一方で、つらい気持ちに言葉を重ねてくれる、周囲の人の温かい思いやりの気持ちも大事にします。どちらも心を癒す上で大切なものだと言えるでしょう。

⑴ 『こころのスキルアップ教育の理論と実践』指導案1(大修館)
⑵⑶「思考記録表(一人二役)」提供およびストレスマネジメントネットワーク(株)代表 大野裕

専修大学付属高等学校 平澤千秋